この度、劇団四季様の60周年記念公演
「昭和の歴史三部作」のポスター・看板・チラシなどの
デザインを担当させていただきました。
三部作とは、昭和の「戦争の時代」を題材に描かれた
「南十字星」「異国の丘」「李香蘭」の3つの公演のことで
劇団四季様のオリジナルミュージカルです。
三部作と呼ばれていますが、3公演が連続で上演されることはなく
実は今回初めて連続上演される貴重な公演でもあります。
四季劇場 秋 の看板です。
今回の制作に携わる前に、三部作のDVDと台本を拝見し
いずれの公演も衝撃が走ると同時に、
仕事という枠を超えて深く考えさせられました。
「
南十字星」は、南方を題材に、戦後「BC級戦犯」として
身に覚えのない罪に問われて、不条理にも絞首刑判決を受けた
若き日本人学生の悲劇の物語。
「
異国の丘」は、戦後ソ連に抑留され、極寒シベリアで過酷な重労働の末、
祖国に戻ることなく命を落とした日本人の一人でもある
貴公子(日本の首相の息子)の物語。
戦後の中国での弾劾裁判で死刑宣告を受けた日本人「山口淑子」の
半生を描いたもの。
戦後70年近く経ってしまい、戦争のことを知らない世代も増えた今日、
逆に言うと、まだ1世紀も経っていない過去に
このような悲劇の時代があったことを残念ながら忘れかけています。
決して忘れてはいけない過去を、
戦争経験者が語り伝えていくのも難しくなっていくでしょうが
このようにミュージカルとしてずっと上演し続けていく
劇団四季様の強い使命感を感じました。
公演を通して「戦争」という事実があったことを
後世に伝え継いでいくことを切に望みます。
歴史としての実相を知る、ということも大切ですが、
私にとっては、今、いかに平和な時代に生きているのかと
痛感させられ、これからの自分の生き方を問うきっかけになりました。
いろいろと普段悩んでいることも小さなことだと思いました。
それすらもできずに不条理に命絶たれてしまった人々や
戦争の時代に翻弄された人々のことを思えば
どんなに悩んでいようとも、私たちには
将来どのようにも転換できるチャンスもあるわけですし。
うまくいかないことを世の中や環境のせいにすることも
ただの「甘え」でしかないように感じました。
私が小学校の2年生くらいのときに
市民会館で観たときの記憶が今も鮮烈に頭に残っています。
社内でスタッフ(自分以外はほとんど20代)に聞いたら
そういう戦争映画を子供の時に観ていないと言っていました。
私の場合、小学校低学年でしたので相当な衝撃はありましたが、
戦争がいかに恐ろしいものなのか、と認識し
今の平和が当たり前だと思ってはいけない、と
子供ながらに感じていました。
戦争を題材にした映画や演劇は
子供というより大人向けのものかと思ってしまいますが
過去の事実を伏せる理由はないと思います。
むしろ過去を知り、「今を生きること」をどう考えるかが
大切なのでは、と思います。
私も含め、特に戦争を知らない世代の方には
遠くない過去にこのような激動の時代があったことを
知る必要があると思います。
歴史の教科書だけでは得ることができないものが
ストーリーや美しい歌や舞台演出などで表現されて、
心の奥深くに刻まれる素晴らしい公演を
多くの皆様にご覧いただきたいと思います。
こちらの「南十字星」のポスターは
四季劇場 夏 に掲出されていました。
異国の丘:6/20〜7/13 四季劇場秋
李香蘭:9月上演予定 四季劇場秋